『アガる』に思う、人と寄り添う言葉の移ろい 2009年冬

言葉の怖さ、驚き

理解ができない言葉、「アガる」

「テレビ番組の仕事でいったタイで、トラと散歩したんですね。やばくねえっすか。そのとき、めっちゃ怖かったけど、アガりました」

  • 『TwinPlanet 今年のギャル的流行語トップテン』より引用
  • 産経新聞 平成21年12月4日発行に掲載のもの

これはある若い女性モデルの発言なんですが『これをどのように解釈するか』ということになりますと「はっ? なに言ってるの? あんた本当に日本人?」と厳しい言葉が口をつきながら、ありがた迷惑にもある人は教えてくれそうです。

「だってさ、この娘はトラと一緒なんだから、犬や猫じゃないんだから、散歩してるのは。生まれは葛飾柴又でもないよ、トラだからって。当然怖いわけよ、恐怖だよ、身の毛もよだつさ。そうすりゃ緊張もするよな。俺なんか逃げちゃうね、一目散に」

確かに言葉は難しい。それでも

言葉は人の口から出てくるもの、人が生み出すものですから、言葉は人それぞれで意味するものが違ってもおかしくはない。極端にいえば、誰かさんにとっての肯定が、別の誰かさんにとっては否定にもなってしまう。言葉はかように難しいもの。

その一端を表すのが『言葉』という概念があるにもかかわらず、それとは別個にある『定義』という概念なのだと思います。定義を覚えることによって、自らの体の、頭の一部とすることによって、それを知る者共通の認識をもつことができ、共通の言動を期待することができる。いずれの世界においても、言葉を通して頭や心を一緒にしていかなければならない場面においては、ゆるぎのない、解釈を許さない定義というものは極めて重要な役割を果たしているのでしょう。

しかし、言葉そのものにかような定義と同じことを求めることは難しい。ただ一つの意味を求めることは難しい。「アガりました」と聞けば、「緊張したんだね」と思うのが多くの人にとっては普通なんでしょうが、しかし「怖かったけれど、<緊張しました>」ではなにかしっくりこない。別の意味で『アガりました』は使われているのではないか、と思う人も少なくないでしょう。

『アガる』は「最高」、これいかに

冒頭の発言は、調査会社:TwinPlanetによる『ギャルが選ぶ流行語大賞』で大賞に選ばれた『アゲ・サゲ』にまつわる、モデル:小森純によるものです。『マジでアゲなんだけど」というように使うそうです。この『アゲ』は、『最高だ』という意味だそうで、ですから、『(トラとの散歩は)めっちゃ怖かったけれど、<最高でした>』とのことです。

これまでの使い方とは違いすぎる意味で、わからなくても仕方がないとはいえ、そして言葉は時とともに人とともにその意味が移ろうものとはいえ、言葉の怖さ、驚きを覚えます。

 

言葉は人が生み出すもの

「マジでアゲなんだけど」

これは『本当に最高です』という意味だそうですが、しっくりきません。

「そうだよね。あげだよね。いやー大きいね。しかも2枚だよ。たっぷり旨味吸ってていいね。特製きつねうどんだよ」と言いたくなってしまいます。『アゲ』といえば『揚げ』であって油揚げですから。きつねコンコン、おいなりさんであります。

耳で聞いたことがない『アガる』

これはギャル語だそうですが、なんだかな。阿藤快でなくても言いたくなってしまいます。最近は20歳前後の女の子と仕事はしていませんが、ホテルでお世話になっていたときはその機会が少なくなく、しっかりと真面目に取り組んでいる人と多く仕事をしました。もちろん仕事での付き合いですからそのような言葉遣いであることはまずありえないのでしょうが、そのときもそう、今だもって実際に「マジでアゲで」なんて聞いたことがありません。

言葉が表す、その人の底の浅さ

人それぞれの思いや考えがあってのことでしょうから、そう考えるとなんとも言えなくなってしまうのですが、言葉は人の口から出てくるもの、人が生み出すものですから、「マジでアゲで」という言葉を聞くと、その人の底の浅さと言いますか薄っぺらさと言いますか、何か軽いものを感じてしまうので聞きたくないものです。

『ひとを見た目で判断してはならない』とはよくいわれることですが、可能であるならば、そして人様から悪く思われたくないのであれば、自らが言動を含めた『見た目』を変えるべきです。とやかく言われるのが嫌であれば自らが変わればいい。人をそう簡単に変えることはできません。小さな変化の積み重ねで大化けするかもしれません。

私は狐になりたい

いずれのサービス業でもそうでしょうが、クリスマス、年末、年始となりますと、ホテルも極めて忙しくなります。ホテルでお世話になりました方たちはお元気でお過ごしでしょうか。不況、経費節減という向かい風をまともに受けて、ひと昔と比べてずいぶんと客足が落ちたという話も耳にしますが、それでも一定の高い質を保ったうえでのサービス提供の忙しさには変わりはないように思えます。

私自身もそうですが、お客様に快適な時間をお過ごしいただき、お客様から笑顔と「ありがとう」の言葉をちょうだいできますように、変わらず元気で頑張っていただきたいものです。そうであれば私は「マジでアゲなんですけど」。

はい? 「おまえから言われると狐につままれたみたいだ」? それはそうでしょう、まさに『揚げ』ですから。

 

  • 記事名:『アガる』に思う、人と寄り添う言葉の移ろい 2009年冬
  • 記事更新日:2009年12月18日、2016年1月30日、2016年2月18日
  • 記事出典元:山上真の本当に笑顔にできるんですか!!

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