展覧会【肉筆浮世絵】を見た 競いあう女の色艶に偽りなし(上野の森美術館:東京都台東区)2016年冬

天候に恵まれた 平成28年1月14日の東京の朝

平成28年1月14日

今日は天候に恵まれました。真っ青な空。快晴。一日中あちらこちらへ足を運ぶ予定でしたから、ありがたい限り。

心持ちも晴れ上がっていました。

上野アメ横を抜けて上野駅不忍口前の十字路から、上野の森美術館を臨む
上野アメ横を抜けて上野駅不忍口前の十字路から、上野の森美術館を臨む

御徒町駅で降りて上野アメ横を通って、上野駅に出ました。

上野アメ横は10時過ぎですとまだ営業を開始していない店が多く、人のながれは控えめ。店からは「どう、これ、おねえさん、安くしておくよ」などとおばさんに掛け声がかかっていました。

 

上野恩賜公園に設置されている西郷隆盛像

京成上野駅の横にある、上野恩賜公園の階段を上がっていきます。

30年ほど前は、この階段の横には大勢の似顔絵師がいた覚えがあります。この日は一人二人いたかどうか。高齢化や道路、公園の取り締まりの強化の影響でしょうか。

西郷隆盛像(東京都台東区)
西郷隆盛像(東京都台東区)

公園の人のながれも控えめ。高齢者のカップルや団体、また遠足、社会科見学の学生たちを目にしました。

今日の目的の一つである上野の森美術館に足を運ぶ途中に、西郷隆盛像がありました。今日も人の目を集めていました。

最近は特に、この像を含めて、一般に知られている西郷隆盛の顔は本人の顔ではない、と言われていますが、この像の顔そして姿を見るとやっぱり西郷さんだ、と安心してしまいます。

上野恩賜公園の西郷隆盛像を観光客が仰ぎ見る
上野恩賜公園の西郷隆盛像を観光客が仰ぎ見る

 

初来館 上野の森美術館

今日のお目当て第一弾は、上野の森美術館です。

ここで開催されている展覧会『肉筆浮世絵』の前売券を買っていましたが、閉会期限が迫っていましたので平日の休みにと思い行ってきました。大混雑を避けるためです。

上野の森美術館(東京都台東区)
上野の森美術館(東京都台東区)

上野の森美術館は初めて足を運びました。昨年平成27年、東京都美術館で開催された『モネ展』に足を運んだ際に、上野の森美術館がある場所を知ったぐらいに関心のない場所でしたが、このほど縁があって初来館です。

上野の森美術館の名称を英訳すると

上野の森美術館の名称、英訳では『The Ueno Royal Museum』と表記していることに関心を持ちました。なぜ『Royal』なのか。これは次の件と関係があるのでしょうか。公式サイトにはその件の言及はありません。

公益財団法人日本美術協会は、明治12年に設立された龍池会を前身とする美術団体で、1883年(明治16)有栖川宮熾仁親王殿下が龍池会総裁に就任され、現在は常陸宮正仁親王殿下が総裁をつとめられています。

  • サイト「上野の森美術館 美術館について」より引用。
  • 備考:上野の森美術館は、公益財団法人日本美術協会により運営されています。
  • サイト管理者:公益財団法人日本美術協会 上野の森美術館

美術館出入口には展覧会『肉筆浮世絵』のポスターが掲示され、建物そのものにも横に広がった大きなそのポスターが貼ってありました。建物そのものがこじんまりしていますしポスターも巨大なものではありませんから派手さ華やかさはありませんでしたが、それとみて現況が分かるものでした。

上野の森美術館で開催された展覧会「肉筆浮世絵」の看板
上野の森美術館で開催された展覧会「肉筆浮世絵」の看板

美術館の出入口にはポスターだけではなく、浮世絵に描かれた人物と思われる絵から写真におこしたパネルがありました。ちょっとしたことかもしれませんが、このパネルを作るにも手間暇はかかります。このパネルと一緒に写真を撮っていた人を何人も見かけましたから、それなり以上の意義があったように思います。

上野の森美術館で開催された展覧会「肉筆浮世絵」の会場出入口でイラストパネルがお出迎え
上野の森美術館で開催された展覧会「肉筆浮世絵」の会場出入口でイラストパネルがお出迎え

100円硬貨が戻ってくるコインロッカーがあります

私は大きなかばんに荷物を入れて移動することが多く、この日もそうでした。結構な重さがありそれを持ちながら鑑賞に1,2時間を費やすことは思いの外体に影響があるものです。はっきり言えば疲れてしまいます。だからコインロッカーを探すことはいつものことです。

上野の森美術館では、美術館の建物の外の出入口にコインロッカーがあります。100円硬貨を1枚入れて、コインロッカーを開ける際に100円硬貨が戻ってきます。ありがたい。

ここにあるコインロッカーに入らないほどに大きな荷物があったり、コインロッカーがすべて使用されている場合には、美術館内の入口で頼めば直接預かってくれるそうで安心しました。

上野の森美術館の出入口に設置されているコインロッカー
上野の森美術館の出入口に設置されているコインロッカー

館内はやはり狭い 混雑するとその場にいられる気がしない

上野の森美術館は建物を外から見ると大きく感じられません。建物の中に入りますと、やはり狭い。天井も高くありませんから窮屈に感じます。

1階には覚えているだけで、次のものがありました。

  • チケット売り場
  • ショップ
  • カフェ
  • 化粧室

コインロッカーは、美術館の外の出入口にありますが、館内にはありません。

ショップの奥にカフェがあるので、そこではゆっくりできるものと思いますが、ショップが狭い。そのうえレジが一人または二人。レジへ並ぶ客と品物を見る場所が同じですから混雑するのも自然です。展覧会公式図録(税込み2,700円)を買おうと思いましたが、その場の状況への不快感と行列が我慢できないほどでしたので止めてしまいました。

館内でアナウンスされていましたが、会場に入りますと途中で化粧室がないため、入場前に1階の化粧室で用を足しておいたほうがいいでしょう。

 

展覧会『肉筆浮世絵 美の競艶』

前売りチケットは200円も安い(当日券比)

一般の当日券の料金は1,500円です。

これだけの価値のある、行ってよかったと思えた展覧会でした。私は前から展覧会に興味関心がありましたので、前売券を買っていました。

前売券は一般で1,300円。当日券よりも200円安い。これはばかにできません。100円割引ですと自動販売機で飲み物1本も買えませんが、200円ですとそれが買える。場合によっては片道の交通費になります。

その上、展覧会公式サイトでチケットを買いますと手数料がかかりません。今回はサイトでの購入の際の支払い方法はクレジットのみでしたので、個人情報の扱い方に不安のある人にとっては問題ありでしょうが、これも時代の流れでしょう。

この場合、チケットの現物が郵送されるのではなく、チケットに相当するサイト上の画面を印刷し、それを会場に持っていきます。チケットの現物ですと、それを紛失してしまえば再発行はありませんので損をしてお終いですが、チケット相当物の印刷であれば、何度でも印刷することができるわけですから、チケット管理の点でも長所があります。

なお本展覧会の特徴的な割引として『着物着用でのご来館の方は、200円引き』というものがありました。

展覧会「肉筆浮世絵」のチラシ表 期間2015年10月20日~2016年1月17日 会場上野の森美術館
展覧会「肉筆浮世絵」のチラシ表 期間2015年10月20日~2016年1月17日 会場上野の森美術館

『肉筆』の浮世絵とはこれいかに

肉筆浮世絵、という言葉は初めて聞きました。一般に知られている浮世絵は【版画】です。その浮世絵と区別するため、【絹や紙に筆で直接描いたもの】を『肉筆浮世絵』と呼んでいるそうです。

版画はいわば印刷物ですから手間暇を惜しまなければ量産することが可能ですが、肉筆は一点もの。それだけ価値が高いものとして評価されたそうです。

写真撮影は禁止

展示されている作品については、慣例通り、写真撮影は禁止されていました。ですから作品そのものを写真で案内することはできません。そのときの記憶を頼りにしながら進めていきます。

なお、各作品の情報については、会場にて無料で取得した公式リストの情報によります。

 

作者不明『京・奈良名所図屏風』

会場に展示された1作目がこちらのものでした。

この会場の作品のなかでは最も古いもの。色味は渋いものでしたが、屏風だけにそれはそれは大きく立派なものでした。

寺社がそこかしこに描かれており、その中には奈良の大仏もありました。

  • 作品名:京・奈良名所図屏風
  • 作家名:無款
  • 形状:六曲一双
  • 製作年:寛永~正保年間(1624~47)頃

 

菱川師宣『江戸風俗図巻』、宮川長春『路上風俗図巻』、鳥文斎栄之『七福神吉原遊興図絵巻』

横に長い巻物はいくつか展示されていましたが、いずれも人目を集めた人気の作品。行列ができていましたから「何時になったら見れるんだ」と文句を行っていた人も多数いました。

それでも、どこでも一人分ぐらいの場所はポッカリ空いていました。私はそこにめがけて突撃します。

そうでなくても、巻物の最後の部分はなぜか、場所が空いていることが多かった。そこが狙い目です。口を動かす前に手足を動かせ、の一例です。

特に印象深かったのが、鳥文斎栄之の『七福神吉原遊興図絵巻』です。

作品名のとおり、七福神が遊郭のある吉原へ遊びに行くさまを描いたもの。籠に乗った布袋様などの道中の模様、吉原での酒宴が描かれていました。楽しさ可笑しさで思わず笑い声が出てしまいました。

  • 作品名:七福神吉原遊興図絵巻
  • 作家名:鳥文斎栄之(ちょうぶんさい えいし)
  • 形状:一巻
  • 製作年:文化年間(1804~18)

 

喜多川歌麿『西王母図』

会場で耳にしましたのは「遊女の絵が多いね」ということ。本当にそのとおり。

それを踏まえますと、浮世絵で描かれた女性は、現代で言うところのグラビアアイドルなのかとも思いました。

見栄えの良さ、派手さ、着飾った華やかさ。

体を張って世を渡っていること。

その中にあって印象深かったのがこの絵です。

淡い緑色の服に白い顔。品の良さが際立っています。

遊女ではない。

日本的ではなく、何か中国のお姫様であるかのような佇まい、雰囲気。しかも作者はあの歌麿ときました。悪いはずがない。良いのです、とっても。

今知ったのですが、この女性は本当に中国の人だそうで、しかも霊山に住む仙女、西王母。雰囲気そのままで驚きました。

  • 作品名:西王母図(せいおうぼず)
  • 作家名:喜多川歌麿(きたかわ うたまろ)
  • 形状:一幅
  • 製作年:寛政年間(1789~1801)頃

本記事参考サイト:朝日新聞デジタル「喜多川歌麿の「中国の仙女」見つかる 肉筆の浮世絵

  • サイト管理者:朝日新聞社
  • サイトアドレス:2016年3月29日現在 →2016年5月7日現在リンクなし
    http://www.asahi.com/articles/ASH4F53TQH4FPTFC00L.html

 

初代歌川豊国『見立雪月花図』

雪月花図ですから、雪、月、花で各1枚ずつ、合計3枚で一式になっています。

表装を見ますと各絵でデザインが異なり、3枚を並べますとこれらは一式であることが明らかに分かるデザインになっていて趣深いものがあります。

  • 舞う中を大きな笠を被り出ていこうとする女
  • 柳に隠れた大きな満月の下で暑さのためか腕まくりをして出歩く女
  • 咲く頃青銅の鐘に目をやる女は何を思うのか

このような絵に惹かれますと、日本に生まれ育ったのだと強く思う今日このごろ。生まれてきて生きてきて良かったと思います。

これらのうち『雪』に描かれた女性は、美術館の出入口に設置されたパネルの一つでした。

上野の森美術館で開催された展覧会「肉筆浮世絵」の会場出入口に設置されたイラストパネル 見立雪月花図(初代歌川豊国)の一部
上野の森美術館で開催された展覧会「肉筆浮世絵」の会場出入口に設置されたイラストパネル 見立雪月花図(初代歌川豊国)の一部
  • 作品名:見立雪月花図
  • 作家名:初代歌川豊国(しょだい うたがわ とよくに)
  • 形状:三幅
  • 製作年:文政3~7年(1820~24)頃

 

葛飾北斎『京伝賛遊女図』

これも有名どころ、葛飾北斎の作品。

これが印象深かったのはそのためではありません。他の作品のように絵の具で全面的に塗りつぶしたものではなく、墨絵のように筆の運び方が残されていたりさらりと描いたような絵であったから。それでいて遊女の華やかさ、実在感を覚えました。

素人の私では『富嶽三十六景』からこの絵は思い浮かびません。

  • 作品名:京伝賛遊女図
  • 作家名:葛飾北斎(かつしか ほくさい)
  • 形状:一幅
  • 製作年:寛政末年(1798~1800)頃

 

祇園井特『立姿美人図』

立姿、服装の良さもさることながら、この顔が良い。特徴的です。

太いまゆが濃く、目がぱっちり。唇は黒い。白い肌に映えます。

印象に残ります。

祇園井特は京都の絵師ですが、江戸時代当時の京美人を写しとった絵なのでしょうか。

  • 作品名:立姿美人図
  • 作家名:祇園井特(ぎおん せいとく)
  • 形状:一幅
  • 製作年:享和年間(1801~1804)頃

 

河鍋暁斎『一休禅師地獄太夫図』

昨年2015年の夏、三菱一号館美術館にて河鍋暁斎の展覧会がありました。

行きたいと強く希望していましたが都合が合わずに断念しました。この絵を見てやはり、行けばよかったと後悔しましたが先に立ちません。

美人と坊主と骸骨と。

どんな組み合わせなんだと可笑しさで笑ってしまいますが、それでもいいねえと口から出てしまうのは、河鍋暁斎の力なのでしょう。

そうですか、明治時代の作品なんですね。

  • 作品名:一休禅師地獄太夫図
  • 作家名:河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)
  • 形状:一幅
  • 製作年:明治18~22年(1885~89)
  • 備考:下の写真の、右側の絵がこの『一休禅師地獄太夫図』です。この写真は、この展覧会のチラシです。
展覧会「肉筆浮世絵」のチラシ裏 期間2015年10月20日~2016年1月17日 会場上野の森美術館
展覧会「肉筆浮世絵」のチラシ裏 期間2015年10月20日~2016年1月17日 会場上野の森美術館

 

展覧会『肉筆浮世絵』の概要

  • 展覧会「シカゴ ウェストンコレクション 肉筆浮世絵ー美の競艶 浮世絵師が描いた江戸美人100選」
  • 日時:2015年11月20日ー2016年1月17日 10-17時(通常時)
  • 場所:上野の森美術館(東京都台東区)
  • 観覧料:一般1,500円、高校生・大学生1,200円、小・中学生500円(当日売)
  • 備考:この展覧会は上野の森美術館のほか、2015年中に大阪市立美術館(大阪府大阪市)、北斎館(長野県上高井郡)においても開かれました。

本記事参考サイト:【上野の森美術館】展示のご案内 肉筆浮世絵ー美の競艶

  • サイト管理者:公益財団法人日本美術協会 上野の森美術館
  • サイトアドレス:2016年5月7日現在(リンクの対応について未詳のためリンクをしない)http://www.ueno-mori.org/exhibitions/article.cgi?id=137

本記事参考サイト:肉筆浮世絵ー美の競艶(公式サイト)ウェストンコレクション

  • サイト管理者:
  • サイトアドレス:2016年3月29日現在 →2016年5月7日現在リンクなし
    http://weston.exhn.jp/index.html

 

上野の森美術館の概要

  • 名称:上野の森美術館
  • 住所:〒110-0007 東京都台東区上野公園 1-2
  • 最寄り駅:JR 上野駅 公園口より徒歩3分、東京メトロ・京成電鉄 上野駅より徒歩5分

本記事参考サイト:上野の森美術館【ホーム】

  • サイト管理者:公益財団法人日本美術協会 上野の森美術館
  • サイトアドレス:2016年5月7日現在(リンクの対応について未詳のためリンクをしない)
    http://www.ueno-mori.org/

 

  • 記事名:展覧会【肉筆浮世絵】を見た 競いあう女の色艶に偽りなし(上野の森美術館:東京都台東区)2016年冬
  • 記事更新日:2016年1月24日、2016年3月29日、2016年5月7日
  • 記事出典元:山上真オフィシャルサイト