天知茂のテレビ朝日ドラマ【江戸川乱歩の美女シリーズ 白い乳房の美女】1977年、片桐夕子、岡田奈々。

【天知茂】のドラマ『江戸川乱歩の美女シリーズ 白い乳房の美女』(1981年)片桐夕子、白都真理、岡田奈々 2010年秋

体を張るだけではない、演技も上質な野上みやこ役の片桐夕子

『美女シリーズ』と銘打たれるだけのことはある出演者。

岡田奈々の透明感

白都真理の華やかさ

五十嵐めぐみの颯爽感

幸福感表す黄色い服に身を包みながら対極の悲壮絶望を放つ野上みやこ。

ラストの「愛が欲しい」に思わず目を潤ませる。

体を張るだけではない、演技も上質な野上みやこ役の片桐夕子。

以上

■ 記事名:天知茂のドラマ『江戸川乱歩の美女シリーズ 白い乳房の美女』(昭和56年10月3日)を見た 2010年秋

■ 記事更新日:2010年10月24日、2016年2月7日、2016年3月8日、2016年11月6日、2017年5月20日、2017年11月24日

■ 記事出典元:山上真の噂のスマイリングアワー


追記 2016年7月30日

2016年7月2日、本作品のDVDを見ました。以下は、その際の感想です。

人を信じられない道化師は「愛が欲しかった」

婚約破棄、他の女への思いが告白され愛が破れ、不信が生まれる

婚約者である白井清一(演者:荻島真一)との関係が永遠に続くこと、それが野上みや子が望む愛。

結婚をすることで今までとは異なる世界に向かって羽ばたきたい。大きな期待が彼女にはありました。

婚約関係にあるといっても婚前交渉はないようす。何年もその関係が続いていますが、自ら認める性格の暗さ、自信のなさ。そして女として黙って惚れた男に付いて行きたいという思いが、それを突き破る行動に移させなかったのかもしれません。

婚約という形で彼との関係が現実の信じるに足りる愛だと思っていたにもかかわらず、白井清一から婚約解消を切りだされ、挙句に自分の妹の野上愛子が好きだと彼に告白されてしまう野上みや子。

夢破れてどん底に叩き落とされて絶望します。

生みの親への実感なき愛は、自己を甘やかし責任を無にする

本作品の最後で明かされますが、野上みや子は両親と血のつながりのある子供ではありません。彼女は長い間子供のできなかった夫婦がそれでも欲しかったためにもらわれた子供。

就職するために取り寄せたのでしょうか、セーラー服のお下げ髪の野上みや子(これがまた似合わない)が戸籍を見て両親が実の親ではないことに声が出ず、愕然とします。これまでの親子関係は何だったのか。

本当の両親と思っていたのに何もかもが嘘だったのか。親を、人を信じられなくなります。

育ての親ではなく、まだ見ぬ生みの親を神のように絶対視し、その愛を受けることができなかった不遇を呪うのです。

その呪いが『自分は悪くない。人が悪いのだ』という確固たる思いをもたせ、『私の愛する白井清一を奪おうとする、野上愛子や相沢麗子が悪いのだ。許さなーい』という思いを野上みや子の心のなかで生じさせたことは想像するに難しくありません。

理由なき恨みを晴らすその日まで道化師と化した野上みや子

人を信じることができず、人を頼ることができないのですから、自らの力のみで犯罪を実行するよりほかありません。最後まで成し遂げたい。

犯罪を実行したことを知られないようにするためにはどうすればよいか。年齢も性別も不詳のピエロに化けた。結果を出すまではどうしても絶対に死んではならないために地獄の道化師となった野上みや子。

結果を出すことができれば、その後はどうなってもいいという必死さをもって犯罪に臨んだことは、自らの顔にかけた硫酸や、最後の最後で口に入れた毒を準備していたことからもうかがえます。

本作品の最後。野上みや子の「愛が欲しかった」を受けて、明智小五郎の助手、文代(演者:五十嵐めぐみ)が口にした「分かるわ、その気持ち」。これは何を意味するのでしょうか。

『江戸川乱歩の美女シリーズ 白い乳房の美女』に対する疑問点

1】指紋

野上みや子、また野上愛子や相沢麗子に対して死の予告を意味する『ピエロの人形』が宅配便で送られました。そうしたのはすべて野上みや子ですが。

それが入っていた箱やその包装紙に指紋がついてるか否か、確認することをしなかったのはなぜなのか。確認するという描写はありませんでした。

2】胸のほくろ

野上みや子の右の胸には大きなほくろがあります。それは本作品の冒頭のヌードシーンではっきりと分かります。

本作品の最後に、明智小五郎に胸をはだけられてあらわになった胸のほくろの接着剤が、それと分かる付け方をされていました。それだけ見れば雑な仕事です。

接着剤でほくろを付ける人が彼女に遠慮したのでしょうか。まさか。

3】毛髪

全身を石膏で固められた伊東ふじ子の毛髪で、その遺体が野上みや子か否かを確認することはできなかったのでしょうか。

DNA鑑定は本作品が放送された1981年には確立していなかったようす。

また歯型から人物を特定することをしなかったのはなぜなのか。この方法もこの時代には確立されていなかったのでしょうか。

4】単独犯

伊東ふじ子の土葬を掘り起こしたり(彼女の住む埼玉県戸田市の某地区は土葬の地域という設定です)

彼女の全身を石膏で塗り固めたり

彼女の顔を判別できないようにするために硫酸を手に入れたり。

女手一つでできることなのか。

本当に単独犯なのでしょうか。

片桐夕子/野上みや子 役

~地獄の道化師~

裸に始まりヌードに終わる

作品の冒頭から入浴シーン。

前から裸を拝みます。そのシーンの彼女の顔には色気も何も感じないのですが、その身体の素晴らしさに私はひれ伏すのです。

片桐夕子の肉体美も素晴らしい。作品の頭から『ごちそうさまでした』。それでは終わってしまいますがそんなことはありません。

ピエロの人形を受け取る自作自演の場面では、白いブラウスを着ていました。その爽やかな印象が、自作自演の滑稽さをものの見事に消し去り、その後の彼女の悲劇性を増幅させました。

愛を失い生み出された絶望は、人を死へと追いやる

婚約者である白井清一から切りだされた婚約解消、その前にあった親友、伊東ふじ子の死が彼女を人生のどん底に突き落とし絶望へと追いやります。

その際に着ていた服は黄色のスーツ。幸福感を帯びる黄色とは皮肉なものです。

この時の彼女の絶望感は絵に描いたようなもので、顔を見ていられなくなります。その雰囲気で彼女が自らの死を招くことが必然であるかのような悲劇性を生み出し、彼女に対する同情さえも生まれます。

エンディングテーマが流れる最中にもこの場面が登場しますが、同じ場面でも、そこでは自らの出生、生い立ちに踊らされ狂った、悲しい道化師をみることができます。

素性を隠すピエロは「許さない」と本音を絶叫し奈落の底へ突き落とす

彼女が変装したピエロ、すなわち道化師の姿は2度。

野上愛子を襲った1回目は片桐夕子の顔にメイクを施したものではなく、演出のためと思われますが、男の顔でした。

野上愛子を襲った2回目は、ピエロのお面を被って女か男か分からないようにしていました。いずれのピエロの顔も気味が悪い。怖いものです。

ピエロのお面を外して野上愛子を崖から突き落とす野上みや子。その際の彼女に言い放った「許さなーい」は今思い出しても身震いする感覚があります。

血のつながりのない、周りのみんなから愛されるかのように思える妹を憎み恨んでいることを隠すことのできなくなった野上みや子の顔が、恐ろしいのです。

「愛が欲しかった」

野上愛子を崖から突き落とし死に追いやったものの、相沢麗子の殺害に失敗しました。

その後、明智小五郎らに埼玉県内の潜伏先を発見され急襲された際、彼女は逃亡が困難であると判断したのでしょうか、顔に硫酸をかけて焼けただれさせます。これでは誰だか分からずじまい。

その際の彼女の、片桐夕子の腹の底から絞り出されるうめき声が良い。演技でこれだけの声を出すことができるのは素晴らしいものです。

顔が焼けただれたため、犯人だとは知られない彼女はその場で保護され、相沢麗子の父親の経営する相沢病院へ入院させられます。顔はもちろん全身に包帯が巻かれて、それゆえに顔が分かりません。

彼女が野上みや子であることを証明するため、明智小五郎は彼女の胸をはだけて右胸にほくろがあることを確認します。最後まで野上みや子のヌードが拝めます。全身包帯女の胸の部分だけが裸ん坊というのも滑稽ですが。

顔から野上みや子であることが分からなくても、声だけで、姿、雰囲気で野上みや子がそこにいます。

「愛が欲しかった」で、見る者の涙が流れ落ちるのです。


北原理絵/綿貫創人の愛人 役

~野上みや子に殺される~

一昔二昔前のドラマにおいてヌードになる人に対する私のイメージは、顔なり身体なりがおざなりの人、というものがありまして、視聴者にとってはヌードで丸儲けだとしてもそれだけで終わってしまうかのような思いを持つことがしばしばありました。

北原理絵の身体は素晴らしい。顔もよろしい。

野上みや子に絞殺される前のシャワーシーンでそれを拝むことができます。本作品が放送された1981年という時代も考慮すれば、日本人離れした身体です。

彼女がロマンポルノの女優としてデビューした時期が前年の1980年とのこと。それでいて本作品の存在感、堂々としたものですが、身体のすばらしさと頭の中身が軽そうな話し方からすると、愛人役というのは適役のように思います。

彼女名前は、この作品でしか耳にしたことがなかったのですが、それもそのはず。その後は歌手、思うように声がかからなくなって小説を書いて女流新人賞を受賞するなどしたものの、1990年台中頃には作家稼業も休業しているようす。

もったいない、というのは男のすけべさだらしなさでしょう。

蟹江敬三/綿貫創人 役

~彫刻家。野上みや子と男女関係あり~

風貌のうさんくささ、言動の怪しさ。

連続テレビ小説『あまちゃん』の祖父役があったとはいえ、刑事役や検事役など晩年の蟹江敬三からは遠く感じるような雰囲気の綿貫創人。

美術品の贋作をして一儲けしたぐらいですから食わせ者には違いありませんが、まさかまさかの殺人犯と警察に疑われて取調室で大弱り。

ところが『自らの疑いを晴らしたい』と頼み込んで明智小五郎の助手になって文代と一緒に野上みや子の関係者を調査して回ります。うさんくさい風貌で。彼もまたピエロなのでしょうか。

本作品における、明智小五郎の変装の対象者は綿貫です。うさんくさい綿貫を最後まで登場させて、最後まで視聴者に『彼が犯人ではないか』と疑わせ引っ張る意図がうかがえます。

本作品でのキャラクターを踏まえた、蟹江敬三の明るい声、声そのものが良いですね。

荻島真一/白井清一 役

~バレエ団経営者。野上みや子の婚約者~

声が良いのは荻島真一も同じです。明るい声の蟹江、渋い声の荻島。そうはいっても、本作品では両者では天と地ほどの違いがあります。

確かに綿貫創人は愛人もいますし、その前には少なくとも野上みや子と男女関係がありました。しかし女関係が派手だとの話があったことから、手当たり次第に自らが手をつけていったのではないか。

白井清一は野上みや子はもちろんのこと、その妹である野上愛子、また出資者の娘である相沢麗子にも惚れられている。片桐夕子、岡田奈々、白都真理。凄いメンバーだ。綿貫とは対照的なもてもてぶりであります。

彼の心は、野上みや子にはなく、本心は野上愛子にこそあったのですが、他方で相沢麗子を通じて出資者である開業医(演者:高橋昌也)を取り込み自ら経営するバレエ団を維持し拡大する、その野心のために本人へ告白までした野上愛子を切って捨てるか否か心が揺れていました。

決めきれなかった。そこに野上愛子の失踪の知らせ。その苦しみから逃れるかのように、本作品の後半では白井と麗子との関わり合いに比重が移ります。自らを愛する、打算的な芸術家、白井清一の姿を見て取ることができます。

そうであるならば、彼を愛した女達は滑稽というか愚かしくある。3人の中で一人生き延びた相沢麗子は、その後白井と一緒になったのでしょうか。人間として子孫を残したいと思ったのでしょうか。

余談ながら、白井がピアノ演奏をする場面がありました。これはカットされていいと思います。芸術家としての魅力を感じることはできませんでした。

白都真理/相沢麗子 役

~白井清一の弟子。白井清一バレエ団の出資者の娘。野上みや子に殺されかける~

やはり白都真理は綺麗です。その彼女のバレエ姿が拝めます。

ただし、白井清一にレッスンを受ける際の彼女は、後ろ姿の顔はまるで見られませんでしたから、後ろ姿は吹き替えかもしれません。前から映す際は顔が写っていたので余計にそう思うのです。

その後、相沢麗子のシャワーシーンへと移ります。

ここで地獄の道化師が窓から刃物を差し入れて彼女の肩に怪我を負わせます(その後も毒物で殺されそうになりますが、明智小五郎の機転でその危機を脱します)。

映画『人魚伝説』(1984年)や同じく『櫂』(1985年)などとは違い、この場面では白都真理のヌードはありません。

すぐさま綿貫創人の愛人へとスイッチ。消化不良の状況から男の視聴者を救出する脚本、演出の妙であります。

本作品の前半、野上みや子が白井清一に婚約破棄をされる場面の前に、彼女と野上愛子が二人で話をしていた場面もさわやかで良いものですが、よくよく考えて見れば恋敵同志。その後の一人の男を巡って流れる血の多さを考えると、なんとも言えない気持ちになります。


岡田奈々/野上愛子 役

~白井清一の弟子。白井清一の援助者の娘。野上みや子の妹で殺される~

岡田奈々も、そのバレエ姿を拝みことができます。これもまた良い。

しかし『ヒロイン・岡田奈々』を見るという点では、同じく天知茂の明智小五郎作品である『魅せられた美女』に軍配をあげます。

本作品では彼女が殺されてしまうということもありますが、地獄の道化師である片桐夕子、殺されないがゆえに本作品の最後まで出てくる白都真理の後塵を拝する印象を覚えます。

やはり彼女には笑顔が似合う。素晴らしい。

地獄の道化師たる野上みや子に襲われた1回目の直後、気を失って横になっていた彼女を白井清一が見舞うのですが、そこで受けた突然の告白。その際の顔いっぱいに溢れる喜び、笑顔の魅力は、ヒロインにふさわしいものです。

岡田奈々扮する彼女の名前は『愛子』。

「愛が欲しかった」と口にした後に絶命した地獄の道化師の妹がその名前なのですから、なんとも皮肉なもので、野上みや子の悲劇性を増幅することに一役買っています。

ドラマ『江戸川乱歩シリーズ 白い乳房の美女 江戸川乱歩の地獄の道化師』の概要

  • ドラマ『江戸川乱歩シリーズ 白い乳房の美女 江戸川乱歩の地獄の道化師』
  • 出演:天知茂、柏原貴、荻島真一、蟹江敬三、髙橋昌也、荒井注
  • 出演:片桐夕子、岡田奈々、白都真理、五十嵐めぐみ その他
  • 放送年:1981年10月3日
  • 放送局:テレビ朝日系列
  • 脚本:宮川一郎
  • 音楽:鏑木創
  • 監督:井上梅次
  • 備考:(2010年10月現在)チャンネル銀河で放送中。天知茂版の初期5作品。第1話以外は見たことないので見たいです。出演者のなかでお亡くなりになった方も少なくなく、TVを通して活躍しているのが分かるのは、蟹江敬三ぐらいで寂しいですね。

本記事の名称、更新日、出典元、写真撮影日

■ 記事名:【天知茂】のドラマ『江戸川乱歩の美女シリーズ 白い乳房の美女』(1981年)片桐夕子、白都真理、岡田奈々 2010年秋

(旧:【天知茂】のドラマ『江戸川乱歩の美女シリーズ 白い乳房の美女』(昭和56年10月3日)を見た 身体だけではない演技の上質な片桐夕子 2010年秋)

■ 記事更新日:2016年7月25日、2016年7月26日、2016年7月28日、2016年7月29日、2016年7月30日、2016年11月6日、2017年5月20日、2017年11月24日、2019年9月15日

■ 記事出典元:山上真オフィシャルサイト

■ 写真撮影日:なし