村田英雄の歌【皆の衆】にみる徳川家康、関ヶ原 2009年秋

徳川家康 化かして、皆の衆をまとめたたぬき

「徳川家康 啼くまで待った」とは『皆の衆』の第2番で出てくる歌詞です。

そのように、千載一遇逃すものかと辛抱した徳川家康は、天下分け目の関ヶ原で勝利し、江戸幕府開府、豊臣家滅亡と徳川家の世を築きます。

『皆の衆』は「嬉しかったら 腹から笑え」「悲しかったら 泣けばよい」と始まります。

勝利したときの腹から笑う家康満面の笑みが浮かんできます。そのためにしてきたことは、その歌詞とは逆の『豊臣家安泰のため』といううそ偽りです。

「嬉しかったら 腹から笑え」

「豊臣を安泰とするためなら 徳川を討つべし」

むしろ石田三成こそが豊臣家安泰のために忠義を尽くし奮戦した。しかし、それは家康に敗北したと同時に、己にまで負けたと同じこと。

 

石田三成

「今こそ太閤殿下の御恩に奉ずべきときではないか」

(『関ヶ原 第3夜 男たちの祭り』より)

石田三成

「義が、正義が勝てぬわけがない」

(『関ヶ原 第2夜 さらば友よ』より)

 

ドラマ『関ヶ原』における石田三成のセリフからも分かる、その実直すぎる正直すぎる思いが、人心を離れさせ、孤立を生み、敗北を呼び込んでしまったのは皮肉なものです。

「嬉しかったら 腹から笑え」「悲しかったら 泣けばよい」というのは実に難しい。

そうはできないこともある。

そうしてはならないときもある。

そうしたから、三成は負けた。

そうしたら、家康は勝てなかった。天下を我が手中にしたい。だから『豊臣家安泰のために、治部少輔三成を討つべし』。

豊臣秀吉子飼いの武将、福島正則や加藤清正また黒田長政や藤堂高虎など、歴々の強者の働き、支えを得たのは、徳川家康のうそ偽りの賜物。皆の衆の働き、支えあっての家康260年の天下取り。

 

石田三成 実直さ、理想のなかに人への感謝はあるか

石田三成(加藤剛)

「金吾が裏切れた義理か。今こそ太閤殿下の御恩に奉ずべきときではないか」

大谷刑部(高橋幸治)

「すべきだ、とおぬしは責めるが、今はあの男を責めるよりも、裏切りをした場合の手立てを講じておかねばならぬ」

石田三成

「いや、もう一度松尾山の陣へ行ってくる」

大谷刑部

「無駄なことだ」

(『関ヶ原 第3夜 男たちの祭り』より)

 

「こうあるべきだ」「こうでなければならない」。正義の実現に心を砕く理想主義者、石田三成に、豊臣家のため働いてきた者へ、豊臣家を支えてきた者への理解、感謝はどれだけあったのでしょうか。

「嬉しかったら 腹から笑え」「悲しかったら 泣けばよい」は実に難しい。

「豊臣を安泰とするためなら 徳川を討つべし」は、19万石の一介の武将に過ぎない石田三成一人にできるわけがない。複数人で、組織で、豊臣家ゆかりの武将一丸となって初めて成し遂げられること。

「今こそ太閤殿下に報いよ」「家康をなぜ討たない。踊らされているのがわからぬたわけめ」では理解もなければ感謝もない。それでは250万石の大大名である家康を討てるわけがない。石田三成は豊臣秀吉ではないのだから。虎の威を借るなんとやらにみえてくれば、それこそばかしあいで、滑稽ですらある。

家康のうそ偽りこそが、秀吉に仕えた歴々の強者の心を強く揺り動かした。そこにあるのは、一時の露の如くとはいえ、その者たちへの理解、感謝。その皆の衆の働きが、支えが、皮肉にも豊臣家を滅ぼす。

 

裏表のない言動に価値を見出す

「どうせこの世は そんなとこ」

「そうじゃないかえ 皆の衆」

家康がうそ偽りへの理解を求めたものに聞えてなりません。わしのことをたぬき、古狸めと人は言うが、わしとて人間じゃ、うそ偽りは仕方がないじゃないか、と。

もしも、本当にそうであるならば、「嬉しかったら 腹から笑え」「悲しかったら 泣けばよい」はなおさらのこと難しい。難しいのが当然ではないか。仕方がない。いや、だからこその輝き、裏表ない言動の素晴らしさなのか。

この歌詞を聴きますと、涙を流すことがあります。それができないことの悔しさなのか。難しさゆえの素晴らしさを感じてなのか。涙は喜びに満ちあふれたときにながすもの、と決めていますから、私はその理由を後者の方と考えたい。だからこそ、駆け引きなく、掛け値なしで、私の思いや考え、感じたことを表すことに心を砕きたい。

 

先日(※ 平成21年11月10日)お亡くなりになった俳優・森繁久彌さんは、ドラマ『関ヶ原』において徳川家康を演じていました。そのご子息は、お亡くなりになった直後のマスコミへの会見でこのように森繁久彌さんを評しています。

「裏表のない、さっぱりとした潔い人でした」

 

→ 本サイト関連記事 【加藤剛】【森繁久彌】のドラマ『関ヶ原』(昭和56年1月2-4日)を見た さまよえる古狸のうめき声 2009年秋

 

歌『皆の衆』の概要

  • 曲:『皆の衆』
  • 発表年:1964年
  • 作詞:関沢新一
  • 作曲:市川昭介
  • 歌:村田英雄

 

  • 記事名:村田英雄の歌【皆の衆】にみる徳川家康、関ヶ原 2009年秋
  • 記事更新日:2009年11月18~19日、2014年1月23日、その他、2016年1月1日、2016年2月16日、2016年5月27日
  • 記事出典元:山上真の「本当に笑顔にできるんですか!!」「5 あの歌この歌 誰が喜び思わざる 裏表のない言動の素晴らしさ」

【加藤剛】【森繁久彌】のドラマ『関ヶ原』(昭和56年1月2-4日)を見た さまよえる古狸のうめき声 2009年秋

俳優・森繁久彌、平成21年死去

称賛の声、多大の名優

平成21年11月10日、俳優・森繁久彌さんがお亡くなりになりました。

昭和を代表する俳優、名優という高い評価の声を耳にします。

他方で、亡くなってほとんど日が経っていないなか、艶聞などほかの人ではまず聞かれない話も多分に漏れてきました。

尋ねる方も尋ねる方、それに答える方も答える方ですが、テレビや映画、舞台に歌手、それぞれに味があり、いずれの分野でも成功をおさめたことの輝きは失われることはありません。「追っかけます」と口にした女優・森光子をはじめとする称賛の声が多大であるのは納得のいくものです。

森繁久彌の徳川家康 ドラマ『関ヶ原』にこの人あり

私にとっての森繁久彌といえば『おやじのヒゲ』であり、『関ヶ原』です。

『おやじのヒゲ』は先日追悼番組として、その第1回が放送されていました。

 

→ 本サイト記事 森繁久彌追悼 森繁久彌のドラマ【おやじのヒゲ1】(1986年10月29日)を見た 2009年秋

 

やっぱり面白かった。

いちいち言わなくったっていいのにな~、そんな小言がまあこれでもかこれでもかと炸裂。普段だったらいらいら爆発の小言なのに、森繁久彌だと笑ってしまう、楽しい、面白い。俳優・小沢昭一いうところの『森繁リアリズム』なのでしょうね。

『関ヶ原』では東軍の大将、徳川家康を演じています。小言・森繁の古狸・家康は見事にはまりまさに適役。

側近である本多正信を演ずる三國連太郎との掛け合い。

5万10万の大軍を動かす、これからの国を動かさんと欲する大将の重み。

三部構成の大作で長い長い時間を要するドラマですが、見終わってぐったり、というよりも『見て良かった』と思える、良かったと口から出る素晴らしさ。

 

己そのもの、『義』に負けた石田三成

古狸に化かされて向けられる石田三成への大きな不満

森繁久彌演じる徳川家康は、石田三成以下の大坂方の不満を抱く武将を討つべく、関ヶ原の合戦を戦い抜き勝利します。それは天下を己が手中に収めんがためのものでした。

 

徳川家康

「何事も、秀頼様、豊臣家安泰のためでござるぞ」

(『関ヶ原 第2夜 さらば友よ』より)

 

その裏にある、徳川天下取りの巨大な野望は

 

「金吾中納言殿は太閤殿下の甥御だ。豊臣に味方するに決まっているではないか。違うか」

(『関ヶ原 第3夜 男たちの祭り』より)

 

という石田三成の実に真っ直ぐな思い、忠義でありながらも正義という名の得体のしれない、甘く酔いしれる考えを木端微塵にしてしまいます。

加藤剛演じる石田三成の豊臣秀吉への見事な忠義が、森繁・家康の化けの皮に隠された偽りの豊臣家への忠誠に敗れてしまうのは、皮肉なものです。

理想だけでは人は舞えない

石田三成

「義が、正義が勝てぬわけがない。いや、勝つ。勝たねばおかしいのだ」

(『関ヶ原 第2夜 さらば友よ』より)

 

加藤・三成が、古狸の策略にはまり、金吾中納言1万5千の兵に裏切られ、負けるのです。

義を貫く理想主義が人心を離れさせ、己を一人にさせたともいえます。いかに『石田三成に過ぎたるもの2つあり。島の左近に、佐和山の城』と謳われた、三船敏郎演じる島左近がいようともどうにもならなかった。

しかしそれは、加藤・三成の核たるもの。取り去ってしまうことのできない『義』

 

勝どきをあげてもさまよえる古狸、徳川家康

鳴り響くトランペットは勝利の高笑いか、古狸のうめき声か

ドラマの幕が閉じられ、山本直純作曲のテーマ音楽が鳴り始めます。

巨大な太陽が赤々とその姿を誇示し、大海原へと沈むなかニニ=ロッソのトランペットが響き渡ります。天下分け目の関ヶ原に勝利をし、見事その手中に天下を収めた森繁・家康の喜ぶ様が、勝利の美酒を呑みながらの高笑いが聞こえるようです。

トランペットは勝ちどきであったか。

いや、その太陽が森繁・家康ならば、トランペットは、それとも違うものなのか。

将来を「義」に求める

徳川家康

「豊臣家子飼いの大名たち、ああも無節操に裏切れるものか。喜ぶ半面、心が冷えたわ」

「これからは、我が徳川家、三成のような家臣に恵まれればよいが。義、忠義の家臣にのう」

(『関ヶ原 第3夜 男たちの祭り』より)

 

そのように加藤剛・石田三成を評した、森繁久彌・徳川家康が開いた江戸幕府が260年もの間日本の政を治めたことはご存じのとおりです。

 

ドラマ『関ヶ原』の概要

  • テレビ:『関ヶ原』
  • 放送日:1981年1月2日-4日
  • 放送局:TBS系列
  • 原作:司馬遼太郎
  • 脚本:早坂暁
  • 音楽:山本直純
  • 演出:高橋一郎、鴨下純一
  • 出演:加藤剛、三船敏郎、丹波哲郎、宇野重吉、三國連太郎、森繁久彌ほか
  • 出演:栗原小巻、杉村春子、三田佳子、松坂慶子ほか

本記事参照サイト:関ヶ原 第一夜 夢のまた夢

  • 備考:約30秒のPR動画があります。
  • サイト管理者:TBS TBSオンデマンド
  • サイトアドレス:2016年5月26日現在
    http://tod.tbs.co.jp/item/1433/

 

  • 記事名:【加藤剛】【森繁久彌】のドラマ『関ヶ原』(昭和56年1月2-4日)を見た さまよえる古狸のうめき声 2009年秋
  • 記事更新日:2009年11月16-17日、2014年1月22日、2015年11月15日、2015年12月15日、2016年1月1日、2016年1月3日、2016年2月16日、2016年5月26日
  • 記事出典元:山上真の「本当に笑顔にできるんですか!! 2 テレビで 育ち 支えられ」

森繁久彌追悼 森繁久彌のドラマ【おやじのヒゲ1】(1986年10月29日)を見た 2009年秋

ドラマ『おやじのヒゲ1』

  • 俳優・森繁久彌追悼
  • 放送日(再):2009年11月12日
  • 出演:森繁久彌・竹脇無我・田中好子・加藤治子・藤岡琢也 その他

 

やっぱりおもしろい 森繁リアリズム、親子夫婦の掛け合い

やっぱりおもしろかった。

本当に自身が小言いってるみたい。これが俳優・小沢昭一が言うところの『森繁リアリズム』か(「表現の新しさに目を見張った 追悼 俳優・森繁久弥さん」俳優・小沢昭一 産経新聞平成21年11月13日発行より)。

掛け合い、言い争いのばからしさおもしろさ、リアリティ。

  • 森繁と竹脇の親子の掛け合い
  • 藤岡と加藤の夫婦の掛け合い
  • 森繁、藤岡、加藤の三人同時の掛け合い

番組最後に森繁久彌による朗読があったはずだが、1回目はそれがなかった。

それは残念だが、それに類することとして『前後裁断』の話をしていた。

本記事参考サイト:BS-TBS 金曜劇場「おやじのヒゲ1」

http://www.bs-tbs.co.jp/genre/detail/?mid=hige01  2016年5月25日現在

本記事参考サイト:gooテレビ番組 森繁久彌さん追悼企画 おやじのヒゲ1

http://tvtopic.goo.ne.jp/program/tbs/21707/274140/  2016年5月25日現在

 

  • 記事名:森繁久彌追悼 森繁久彌のドラマ【おやじのヒゲ1】(1986年10月29日)を見た 2009年秋
  • 記事更新日:2009年11月15日、2015年12月4日、2015年12月31日、2016年1月3日、2016年1月20日、2016年2月16日、2016年5月25日
  • 記事出典元:山上真の一生放蕩記(Blogger)